中西美沙子
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お母さんのための教育特集vol.4
子どもたちの「自立」を育(はぐく)む

▼座談者
長野 哲久氏 :
長野法律事務所・弁護士
林 司朗氏 :
ガイアホーム代表取締役。「家族の絆(きずな)を育(はぐく)む住まい」をテーマに住宅づくりにまい進。
中西美沙子氏 :
教育コーディネーター。執筆・講演活動とともに、文章教室「スコーレ」、画廊「キューブ ブルー」を主宰。


─現代は子どもたちが育ちにくい時代。社会の問題として今クローズアップされているのが、「自立」の問題です。それはニートやフリーターなど、さまざまな現象であらわれています。お母さんのための教育特集、四回目となる今回は、「自立を育(はぐく)む」をテーマに語っていただきました。─

<必要なのは『目標』 そして『チャレンジ』>

中西
 子どもたちを取り巻く環境は自立を育てるようにある、というよりむしろ自立の芽をそいでいるように私には感じられます。自立できない若者や子どもたちの現実について、それぞれのお立場からまずお話いただけませんか?
 私どもの会社に入って来る人は、少なくとも「家を作りたい」という目標を持っていますので、自立できていないわけではありません。ただ、決められたこと、与えられたことは上手に処理するが、自ら課題を探る、新しいことを作り出すという点ではまだまだ足りない感じがします。チャレンジする力があればいいかなあ、と思うのですが。
長野
それは今の時代に欠けているものかもしれませんね。大人も、子どもも。私の仕事や、日々のニュースを見ても感じることですが。
 この間テレビを見ていたら、30歳で親から仕送りしてもらっている、と言っていました。20代後半や30代で親に生活の面倒をみてもらっているというんですよ。ちょっと驚きましたね。でもこの問題は急に出てきた問題ではなく、10数年前からの引きこもりや不登校の延長線上にある問題でしょうね。
中西
 そう思いますね。雇用制度の変化など外側の問題もあるでしょうが、メンタルな要因としては、いかがでしょう? 長野先生は、犯罪や家庭問題に関わっておられますが、青少年の自立についてどんな印象をお持ちですか?
長野

 フリーターであっても依存しないで生活している人もいるだろうし、自立してないから犯罪が起こる、というものでもない。いろいろな要素が絡んで犯罪は起こります。ひとつは個人の資質。それから学校や社会など、その人が置かれている環境や家庭などのバランスが崩れた時に、犯罪が起こりやすい傾向があります。自立していないと目標がなかったり、精神的に流されやすい、ということは言えますね。

 そうですね。やはり私も先生の言われたように目標がないから、流されたり、何も考えなかったりするんだと思う。

<問題は大人の『無関心』 襟を正しませんか>

中西
 積極的(?)ニートもいると思いますがね。自分が本当にやりたいことは何か。それを探し続けているという。ここではそうでないケースの問題を取り上げたいと思います。彼らは将来どうなるのか、その個人にとっても日本の社会にとってもそれは大きな問題です。現代はなぜ、子どもたちが夢や目標を持てないのでしょうか? 林さんは市のPTA連合会の会長もされていますが、どうお考えですか?
 その問題は、家庭や学校などにあった歪みに、長い時間、気付かなかったことによると思いますよ。ひとつの原因に核家族や少子化で起こる問題がありますね。それは自立に必要なコミュニケーションを取る場が少なくなったということです。
中西
 子どもたちを計る物差しが、偏差値という一本の物差ししかない、ということが背景にあると感じますね。やさしい子に育つよりも、点数とることの方が大事、という。家庭も学校もですね。そういう価値観の中では、子どもは居場所を失いますね。やる気も。目標どころではないですよ。長野先生は早くから目標を持って弁護士になられたのですか?
長野
 高校の時ですかね。昔は必死で働かないと食べていけないぞ、という時代でしたから。そこが現代と決定的に違う所ですね。自分の将来についても真剣に考えましたね。誰もが。今は豊かになって何でも手に入るし、そこそこ食べてはいける。今の子どもも、目標を持っていないわけではないと思うのですが、ただ、夢を託す大人や規範になる大人が少ないんじゃないかなあ。大臣や企業のトップを見ても。
 大人が襟を正さねば、と言うことですね。

<私たちができること 社会ができること>

中西

 そうですね。子どもは、大人や社会を映す鏡ですから。なぜ若い世代の自立が弱いのかという背景には、社会の変化とともに、家庭の在り方が変わってきたこともあると思います。ところで、社会が子どもの自立を導けないとしたら、私たちには何ができるのでしょうか?

 小さな成功体験の積み重ねがあるといい、と思いますね。ほめられて自信を持ったり、そこから好きな分野に入っていくきっかけになったりする。
長野
 こうしたら失敗したけど、今度はこうすればいい、とか。
中西
 家庭の中でできることもたくさんあるのでは。今は核家族ですから、昔の大家族の生活の中で自然にやってきた「生きる文化」の伝達みたいな機能が薄れています。おふくろの味であるとかコミュニケーションや人との関係の取り方とか。子どもは社会の中で生きていく力を学べないのですね。林さんは、企業人として「家族の絆(きずな)を育む住まい作り」をテーマとされていますね?
 そう。家族の集まるリビングを中心とした家作りをしています。たまに来るお客様のためではなく、家族が絆を育めるような家です。それが、今の時代に企業人として自分ができることかな。家は、子どもがホッとできる場でなくては。
長野
 私も子ども好きで、一緒によく遊びますし話もします。子どもがホッとできるのは何かというと、家族の仲が良いこと。中心となるお父さんが家族のまとめ役として、最後は締めくくる形がいいんじゃないかな。そして家族で、会話がキャッチボールのように飛び交わないとダメですねえ。
 すごいですね。会話がキャッチボールのように、っていいですねえ。
中西
 親子も夫婦も、きょうだいも、よく風が通っている中では、子どもは信頼関係とかコミュニケーション力などを身に付けますね。家庭は子どもが体験する最初の社会。そこで学べなかったら、外の世界でうまく関係が取れるはずがないですね。
長野
 最近の離婚などを見ても、「お母さん」の意見が最優先、という傾向があります。妻と夫がいるとしたら、お互いの領分を尊重しながら共同生活するのが「家庭」です。そうした時に初めて、「社会」ときちんと関わることができる。今はそのバランスが崩れていますね。子どもが自立できないのも無理ないですよ。
 やはり家庭の果たす役割というのは、大きいですね。

<『義務』でなく、心から家族と寄り添うことで>

中西

 家族がどのようにして子どもたちの自立を育むかが、解決の一歩ですね。外が嵐であっても、家庭はいつも防波堤です。時代が失っているものがあるとしたら、それを補うことを真面目に考えないといけないですね。責任のなすり合いではなく。ノウハウではない方法で。

長野
 子どもたちに、目標や夢を持たせるためにどういうものがあるのかを提示したり、世の中はこういう仕組みなんだよと分からせてあげる。認める場面を常に作っていくことも大事ですね。未熟なうちは少し依存していても、だんだん自信ややり甲斐を通して自立に向かうのを大人は見守っていてあげたいですね。それから家庭においては、食生活の充実が大切と私は思いますよ。
 何でも買える時代でも、お母さんが作った「手作り」のものをきちんと食べさせる。食生活の貧弱は、子どもに大きな影響を与える、と私も思いますね。
中西
 全く同感です。
長野
 家庭が基盤であることを、私も実感しています。自分が家庭人として身を正していかないと、弁護士としてもクライアントときちんと関われないのではないか、と。弁護士の仕事は「知」の部分が中心になるとしても、それを支えるものは「情」でありたい。
中西
 私も持論として、家庭が問題の原因の防波堤であると考えています。最後の砦であるとも。私は文章教室を開いていて、書くことを通して子どもたちに自立することを考えさせているのです。
 仕事がどんなに忙しくても、必ず家族との時間を取るようにしています。そうでなければ、自分の会社がしている家作りが意味を成さないですからね。
長野
 弁護士の仕事はけっこうハードですが、私も家族と接することを大切にしていますね。子どもとサッカーなどして。それは義務としてではなく、積極的に自分が楽しむ時間でもあるのです。
中西
 結論として、家族の絆が「自立」を育む、ということですね。

−どうもありがとうございました。

中日ショッパー 教育特集(4)
2005年4月21日掲載

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