中西美沙子
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お母さんのための教育特集vol.3
『夢』は未来を育む~教えの場と家庭を結んで~

▼座談者
清 邦彦氏 :
東京都立大学理学部生物学科卒業。現在、静岡雙葉
学園理科教諭。日本鱗翅学界会員。「女子中学生の小
さな大発見」(新潮文庫)ほか著書多数
金光真由美氏 :
専業主婦。中学2年生の子どもを持つ
野中 珠美氏 :
仕事を持つ母親。子どもは小学5年生
中西美沙子氏 :
教育コーディネーター。執筆・講演活動とともに文章教室スコーレを主宰。昨年まで中日新聞にコラム「つかまえて!こころ」を連載


─現代は、子どもが夢を育みにくい時代。それはどこに原因があるのでしょうか。子どもたちは日本の未来を支えます。夢やビジョンのない子どもたちが作る世界は、どんなに生きづらいことでしょうか。今回は「夢を育む」をテーマに語り合っていただきました。─

<子どもを取り巻く環境変化 "夢"を育みにくい時代に>

中西
 子どもたちはとても忙しい。勉強や塾、たくさんの習い事などが、ぎっしり子どもの時間を縛っています。時代の変化によって子どもを取り巻く環境も変わりました。まずはじめに、今の子どもたちがどのように見えるか、お話しいただけますでしょうか?
野中
 ゲームの時に、今の子どもたちの遊び方の特徴が見えますね。一人遊びをみんなでやっている、という感じ。
金光
 バラバラなことをやっていて、何となく一緒にいる、という感覚なんですかねえ。
野中
 でも私は今の子にギャップをあまり感じないのです。私自身、塾通いをし、テレビっ子世代ですから。ただ違うのは近所の子と徒党を組んで遊ぶことも多かった。
中西
 大教室の風景は?
 自分の生き方や好きなことを貫けない子が多いと思います。親や先生より、友だちにどう見られるかに気を使っていて自分の個性が生かせない。みんなと同じにしたい、注目されたいけど目立つのがいやという。
中西
 その感情はとても小さいころから始まっているのでしょうね。
金光
 映画のチケットがあったので、「お友だちと観に行ったら」と言うと、「こういう子どもっぽいの、みんな観ないよ」。自分が好きでも、やはりみんなのこと意識して同じにしたいのかな。
野中
 自己主張の中でも、ある程度同じことをしていないと浮いてしまうことを警戒する、という面はありますね。
 まじめにやることが嫌われるから適当に崩れた雰囲気を作る。だから力があっても、伸びなくなってしまう。学校は同世代で成り立つ集団。だから違いが目立ちやすい。顔が違うように、本当はみんな個性は違うのに。
中西
 その根底にはやはり人間の関係が希薄になっていることがあるのでは。
 休み時間が長いと苦痛、と言う子もいる。友だちが少ない子は、何をやっていいか分からないと言うのです。 

<「疑問(なぜ?)」「感動(すごい!)」‐好奇心に裏打ちされた学びが大切>

中西
 それでは、それぞれの立場で「夢を育む」ことを、どのような形でされているのか、お聞きしたいと思います。清先生は「小さな大発見」(新潮社)という大変面白い本を出版されていますね。ご自身も理科が好きで教壇に立ち、楽しそうに生きておられますね。生徒に夢や好奇心を持たせるためにどのようなことをなさっていますか?
 特別なことをしているわけじゃないんですが。子どもの持つ「なぜ?」(疑問)や「スゴイ!」(感動)を大切にしたいと思う気持ちはありますね。疑問をいつもそこで解決するのではなくて、今は分からなくてもいいから、「なぜだろう」というものをいっぱい持ってこれから先の人生に臨んでほしい。
中西
 受験のためではなく、面白いからそれをやる。そして力がつく。つまり好奇心に裏打ちされた学びが大切ということですね。
 すぐに答えを知る必要はないのですね。何年かかっても後から分かるということでも。
中西
 清先生は蝶が好きで世界中、蝶を追いかけているとお聞きしましたが。
 自分の気持ちとしては、少年のころの夏休みの宿題の続きをやっているような感じですかね。
中西
 私は文章教室をやっているのですが、生徒がきらっと輝く瞬間が分かります。それは書くことの苦手な子でも、ちょっとしたきっかけで言葉に興味を持った瞬間です。だから、「言葉は面白いもの」ということが伝わるよう心掛けています。
金光
 うちの子は犬が好きで、盲導犬とか年老いた犬の面倒をみたいと言う。捨て犬を全部引き取りたいとか。親の頭の中ではそんなのダメと思っても、思いの先にやさしさが見えると、邪魔しちゃいけないな、って思う。
野中
 子どもはいろんなものに興味を持っていますが、まだはっきりとした形としては見えていませんね。今はどれだけ自然な形で興味が持てるかどうかを見守っていたい。
中西
 これをやって、良かったなあと思うことがありますか?
野中
 うーん。親子で楽しかったことならあります。学校までの道を親子で歩いたこと。時間はかかりましたが。大人の足でなら30分、40分の距離ですけどね。
中西
 バスなどを利用せず歩いたのですね?
野中
 そうです。朝6時に家を出て、お散歩感覚で。道草ばかりくってるから時間がかかるんですね。犬と遊んだりリスを追いかけたり、草むらの虫や草花を見つけたり。顔見知りになった地元の方から「大きくなったのねえ」など声をかけられるのもうれしかったですね。
金光
 楽しかったでしょうね?親子で良い時間を共有できましたね。
野中
 そう。たくさん話もできましたし、体力もつきました。
 お二人のお母さん方のお話しを聞いていて私は正直ホッとしました。親の夢を押し付けていなくて。私の場合は親の言うことを聞かず、好き勝手やってきて今に至っていますが、「ちゃんと考えなさい。そんな夢みたいなこと言ったって現実は・・・」と言うのも親の仕事ですからね。この辺の兼ね合いが難しいですね。
中西
 私の場合は、言葉に興味があって、言葉に関わることを趣味とも仕事ともつかぬ形でやってきた、ということですかね。
 夢を実現できるかどうかはともかく、夢の方に向かってゆくのは大事。私にとっては理科だけど、「絵を描く」でも「うたを歌う」でもいいわけです。
中西
 好きなこと、やっていて楽しいというものは、その人の人生を大きく支えますね。それが趣味であっても、仕事であっても。

<親は頑張り過ぎず、種をまいてあげるだけでいい>

金光

 今は犬が好き、と言っていても、そのうち「歌手になりたい」とか出てくるかも。否定せずに見守ることも大切ですね。

野中
 親が種をまくためにいろいろやらせてしまうということがあると思います。私も子どものころ、たくさんの習い事を親に押して付けられましたが、やらされたことは全く身になりませんでした。
 私にもその体験はあります。ピアノとかそろばんとか。でも違うところでは親は気付かず別の種もまいていた。親父に魚とりに連れて行かれたこととか。
中西
 そうすると「夢を育む」というのは、「特別の何かをする」ことではなく、むしろ小さな日常の中にすべてがある気がしますね。
 好きなものはいっぱいあっていい。親が知らず知らずにいろいろな種をまいていく。どれから芽が出るかは分かりません。それよりも親が頑張り過ぎないことが大事。子を育てることはある意味植木屋さんと同じで、横に伸びたい木の枝を切ったり、無理やり上に伸ばそうとしてはだめです。
中西
 お仕着せではなく、子どもを細心に、丁寧に見ることですね。

<人間の基本をしっかり教え大人自らも"夢"を育むこと>

 夢は子どものもの。親が頑張らなければならないのは根っこの方。責任感や思いやりとか正義感。人間の基本を教えることですね。そうすれば後は子どもがどの方向に行っても大丈夫。

中西
 同感ですね。夢を持ったら実現に向かって「試みる」こと。人生は長いですからね。時間はたっぷりある。試みる「過程」が大切ですね、結果ではなく。楽しんだり、わくわくしながら。
 今はノウハウの時代だが、ノウハウで育たないものが一番大切。夢や理想はノウハウからは生まれない。
中西
 そして大人が自らの夢を育むことも。日常の中で、子どもと喜びを共有したり共感したりすることが大切ですね。その時初めて子どもは「目覚める力」を蓄えられる。
まず親が、先生が、自分が、生きて感動することですね。身近な大人が夢に向かって楽しそうに生きている姿を目の当たりにすることが、子どもにとって意味を持つということです。私もそういう大人でありたいと思います。

−どうもありがとうございました。

中日ショッパー 教育特集(3)
2004年10月21日掲載

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